魚の心理学 【第三限目】「食欲の心理学:タイラバは何を模しているのか」

「隣の人だけ良く釣れる」という疑問

お店で「人気No.1カラー」と紹介されたルアーを買ったのに、なぜか自分の隣の人ばかりアタリが出る……そんな経験はありませんか?

実はスタッフHも、昔いろいろな釣具店で働いていた頃、よく似たご相談を受けていました。「一番人気のこれをください!」と自信満々にお買い上げいただいたのに、次に来店された時には「全然反応がなかったんです……」とがっかりされる方が、実は少なくなかったんです。

これはお客様が悪いわけでも、ルアーが粗悪品だったわけでもありません。今だからわかること。実は魚には今日、今この瞬間、何を食べたい気分か」という食欲の心理学があるのです。

第1限では「野生の魚は思ったより警戒心が薄い」、第2限では「待ち伏せ場所さえ分かれば出会いやすい」というお話をしました。第3限は、そこからもう一歩踏み込んで「同じ場所・同じタイミングで竿を出しているのに、隣の人だけ釣れる」という現象の、最後のピースを解き明かします。

食欲の心理学って何?

魚は目の前を通ったものに手当たり次第食いつくわけではありません。その日、その時間帯、その潮回りによって「今はこれを食べている」というベイト(捕食対象)が、ある程度決まっています。

人間の食事に例えるなら、「今日は無性にラーメンが食べたい気分」の日に、目の前にどんなに立派な高級ケーキを出されても、なかなか手が伸びない感覚に近いかもしれません。

関門海峡ならではの「食卓」事情

第2限では、早鞆瀬戸周辺の潮流に押し流されにくいポイントを「待ち伏せマンション」と呼んでお話ししました。実はこの激流、マダイだけでなく、マダイのご飯となるエビ・カニといった甲殻類、貝類、イカ類、本虫や青ケブ(アオイソメ)といった多毛類、そしてイワシやイカナゴなどの小魚までも、同じように吹き溜まりへ集めてしまいます。つまり「待ち伏せマンション」は、同時に魚たちの「大食堂」でもあるわけです。

石田船長いわく、関門のベイトは季節や潮回りによって、小魚中心の日もあればエビ類中心の日もあるとのこと。(※長年の現場観察に基づく経験則であり、精密な水中データ等に基づくものではありません)。だからこそ、その日そのポイントのベイトを見極める視点が大切になってきます。

タイラバは何を模しているのか

ここからは、石田船長が独自の特許を取得して開発したタイラバ&ルアー「タイラバ JET」「イカルアJET」の開発した経験をもとにお話しします。 
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タイラバは大きく分けて「ヘッド(オモリ)」「ネクタイ(ひらひらしたリボン状のゴム)」「スカート(細いゴムの束)」というパーツで構成されていますが、実はそれぞれに、関門の激流の中で小魚やエビの動きを再現するための工夫が詰まっています。

  • ヘッド(オモリ)の重さシルエット:小魚が驚いて逃げる瞬間のフォールスピードや水押しを再現
  • ネクタイ(リボン状のシリコンパーツ)の形状・動き:エビの触角や尾びれの動きを模した、繊細な波動
  • カラー(ヘッドやネクタイの色):「オレンジ・赤(エビやカニ、高アピール)」や「グリーン・ゴールド(小魚や濁り潮向け)」など、光量や潮の色によって魚からどう見えるかのコントラストを調整

「なんとなくこの色が人気だから」ではなく、「今日はこういうベイトがいそうだから、こういう動き・色のタイラバにしよう」という発想の転換こそ、石田船長がルアー開発の現場でずっと大切にしてきた視点です。

📝 スタッフHの釣りコラム:水中で見える色が変わる?

お店でタイラバを選ぶとき、私たちが陸上で見ている「鮮やかなオレンジや赤」。実は、水深数十メートルの海底ではまったく違う色に見えているのをご存知ですか?

太陽の光には虹色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)が含まれていますが、水は「波長の長い光(赤やオレンジ)」から順番に吸収していくという性質があります。

つまり、水深が深くなるにつれて、赤い光は水中に届かなくなり、赤やオレンジ色のタイラバは徐々に「黒っぽい色(シルエット)」へと変化していくのです。逆に、青や緑の光は深くまで届きやすいため、水深のある場所ではグリーンやゴールドが本来の色に近く見えます。

🐟「えっ、じゃあなんでタイラバは赤やオレンジが一番釣れるの?」

そう思いますよね!関門海峡のタイラバは水深30〜40m前後で使うことが多く、この深さでは人気の高いオレンジ系カラーも本来の鮮やかさでは見えておらず、グレーから黒っぽいシルエットとして沈んで見えている可能性があります。

実はここが面白いところで、マダイの視力は0.1〜0.2程度と言われており、色を識別する能力よりも「明暗(コントラスト)」や「動くシルエット」を捉える能力に長けているんです。

深場で黒っぽく変化した赤やオレンジは、周囲のぼんやりした海中の色(青緑色)に対して輪郭(シルエット)がくっきり際立ちます。 つまり、マダイからすると「なんだか美味しそうなシルエットが動いているぞ!」と発見しやすくなるわけですね。

「人間の目に見えている色が、そのまま魚に見えているわけではない」。そう考えると、その日の潮の濁りや天気(光量)に合わせてカラーを選ぶ推論プロセスが、もっともっと楽しくなりませんか?😊

関門の主なベイト図鑑

北九州・関門の遊漁船FOLK IN ONの船上で晴天の中釣り上げられた良型の真鯛

「エビで鯛を釣る」ということわざがある通り、甲殻類はマダイの大好物として知られていますが、実は貝類、イカ類、そしてイワシやイカナゴなどの小魚まで、実に幅広いラインナップを捕食しています。

一般的にマダイの適水温は15〜28℃とされ、水温が18℃を超えてくると食欲が旺盛になりやすいと言われています。ちょうど7〜8月は、この適水温帯にすっぽり収まる絶好のタイミングなのです🎣

科学が発達しても、最後は「経験」と「準備」

魚群探知機やGPSなど、船釣りを取り巻くテクノロジーは進化しています。しかし、関門海峡のような複雑な地形・激流の海域で、「今日、この瞬間、どのポイントにどんなベイトがどれくらいいるか」をピンポイントで予測するのは、現代の科学をもってしても困難です。

大事なのは、「今日はどんなベイトが来るか完璧に読み切る」ことではなく、どんなベイトが来ても、船の上で慌てず対応できる引き出しを持っておくことだと私たちは考えています。

船長おすすめ!迷った時のネクタイ4色

  • 黒: シルエットをはっきり出したい時。濁り潮や深場でのアピール力重視。
  • 赤: 定番カラー。オールラウンドに使える万能選手。
  • オレンジ: 水中での見え方の変化を活かし、状況に応じて使い分け。
  • チャート(蛍光色): 晴天時など光が強い時、水中で視認性が高い。澄み潮にも反応が良い。

🎣 ヘッドの重さの目安(関門海峡)
鉛は基本60gですが底取りが苦手な方や初心者の方には80gもおすすめ。タングステンは基本45g60g(鉛のタイラバの60g,80gの感覚を基本としています。ヘッドの色そのものはあまり気にする必要はなく、大事なのはネクタイの色、というのが船長の一貫した考え方です。

📍現在、船上でヘッドやネクタイの販売を行っていません。根掛かりで無くしたり、魚に丸呑みされて持っていかれたりすることも多々あります。仕掛けが無くなってしまうとその時点で釣りが終わってしまいます😢各重さ数個ずつ、ネクタイも各色数枚ずつ準備しておくと安心です😊

自分だけの「勝ちパターン」を育てていく

見方を変えると、面白い逆算もできます。「今日はこの色が効く」という結果は、裏を返せば「今、その色が魚にとってベイトらしく見える条件が揃っている」というヒントだったりします。

もうひとつ大事なのが、その日の天候(光の量)や水の色をよく観察しておくことです。晴れているか曇っているか、潮が澄んでいるか濁っているか。そういった条件と、実際にアタリが多かった時・釣れた時に使っていたネクタイの色を、セットで覚えておくクセをつけてみてください。

これを繰り返していくと、「こういう天気・水色の日はこの色が反応良かった」という、自分だけの経験データが少しずつ蓄積されていきます。船長が長年かけて培ってきた経験則も、元をたどれば、こうした日々の観察の積み重ねだったりするわけです🎣

「マッチザベイト」という考え方

以前(第2限)お話しした「待ち伏せマンション」は、激しい潮流によってこうしたエビや小魚が流され、ちょうど吹き溜まりのように集まりやすい場所でもあります。 ただ、「関門海峡の中で、どの時期にどのベイト(エサ)が一番優勢になるのか」といった具体的な海中の状況については、石田船長が毎日海に出て蓄積してきた長年の経験と観察が、何よりの道しるべになっています。

もちろん、自然相手の釣りに100%の絶対的な正解はありません。「これを使えば絶対に釣れます」というような魔法のルアーは存在しませんし、私たちからもそのようなお約束はできません。

しかし、その日の天候(光の量)や潮の色(澄み・濁り)を観察し、「こういう条件の日は、この色が反応良かった」という経験を積んでいくこと。この推論のプロセス(マッチザベイト)こそが、結果的に反応率を上げてくれる一番の近道です🐟

こればかりはマニュアルを読んでいるだけでは身につきません。第1限から第3限までいろいろな理屈をお話ししてきましたが、ぜひご自身で、関門に経験しに来てくださいね🎣😊

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